問. 次の言葉を訳しなさい.

  1. Testability
  2. Fault Coverage

正解は次のとおりである.

  1. テスト容易性
  2. 故障検出率

これらの言葉はどちらも工学,特に論理回路の分野で使われるワードである.しかし英語の意味と和訳を見てみると,Testability というワードには「容易性」という意味はないし,Coverage というワードには「検出」といった意味はない.これらのからくりを,論理回路設計を例に紐解いてゆこう.

READMORE

回路を製造すると,出荷前に必ず製造されたものに故障が含まれていないかどうかをテストする必要がある.しかしLSIなどののように集積度が高くなると,そのテストは困難となる.そこで*Design for Testability*という技術が生まれた.
*Design for Testability*の施されていない回路に対するテストは,現実的なコストで行うことはほぼ不可能である.そこで回路の設計(*Design*)時に,テスト可能(*testable*)となるように設計する技術が,*Design for Testability*である.それがなぜか日本語訳された時に,*Testability*が可検査性(テストが可能かどうか)ではなく,テスト容易性(テストが容易かどうか)と訳され,今現在の論理回路の世界で普及してしまったのである.

上記で説明した回路テストの方法は,回路に対して適当な入力を与え,設計時の期待する値が出力されるかどうかで故障を検出する.しかし入力によっては故障した値が出力まで伝搬されないことがあり,こうなると故障は検出されない.
*Fault Coverage*は製造された回路をテストする時に使用される言葉ではなく,それより前の段階でテストに使用する入力値を生成するときや,更にそれより前の回路設計時に使用される言葉である.具体的に説明すると,*Fault Coverage*とは回路内で発生する可能性のある全ての故障数を母数とした,回路をテストした時に回路外部で検出できる故障数の割合である.もちろん良いテスト入力を求めることが出来れば,*Fault Coverage*は向上する.
これらの意味を考えると*Fault Coverage*を直訳すれば,故障検出率よりは故障網羅率の方が適していると考えられる.しかし現在では「故障検出率」という和訳が一般的に使用されている.

現在これらの日本語訳は専門家たちの間ではごく普通に使用され,その言葉に対して疑問を抱いていない人たちもいる.しかし長い間使用されてきており,これらの常識を覆すには様々な偉人たちと戦う必要があるのだ.このためこの主張はこのブログ内だけに留めておくことにする.